用語解説コーナー

もう少し、文章がたまったら整理します。

外虚内実 :
皮膚表面が虚している。相対的に内に実が発生している状態。軽く手を当てると、気持ちよく、強く押し込むと痛がるような所。
主体は表面の虚であるから、これを充分に補うことにより、内実を取り去ることができる。
例えば、背部であれば左側が外虚内実ならば、右側は外実内虚になる。
圧痛点と鍼灸臨床 (医道MOOKシリーズ)p55に宮脇先生が寄稿されておられます。
内実外虚:
内(深部)に実が発生しており、相対的に皮膚表面が虚している。深瀉浅補の手技を行う。
強く押すと痛い。主体は内の実であるから、深瀉せねばならない。この所見は外虚を補うだけでは取れない。
深瀉浅補 :
内実外虚の際に用いる手技。表面は虚であるので優しくゆっくりと刺入。そして実の部に到達したら、その場で抜き刺し、あるいは回す様になどの方法で瀉法を施す。抜くときには、邪を絡ませるようにゆっくりと抜き、虚の部分に達したらぱっと抜き、鍼口を閉じる。ステンレス鍼で行うことが多い。
標治法において、内実外虚あるいは血の変化の触覚所見が認めらるとき、表面の虚を補うだけでは時として、内の鬱滞を取り除くことができない。
この時、深部の実的所見に対し瀉的に刺動法を加え、抜鍼の際には鍼口を閉じて補的に抜去することにより、顕著にその目的を達成することができる。
内虚外実:
内(奥、もしくは深部)に虚がある。それにより表面が実している。深補浅寫を行う所見。
深補浅瀉:
虚の部分まで鍼を刺入し、補い時として置鍼。その後表面まで持ち上げ、抜鍼して鍼口を閉じる。本部の谷内秀鳳先生が坐骨神経痛患者さんの治療で深補が必要になるケースがあるとおっしゃっております。 
外実内虚
皮膚表面が実している。主体は表面の実であり、それにより相対的に内虚が発生している。皮膚表陽部に瀉法を行う。瀉的散鍼など。
知熱灸:
井上恵理考案。底辺の直径を1センチほどになるよう、円錐状に粗悪もぐさを捻る。ある程度上質粗悪もぐさが造形しやすい。患者さんが暖かさを感じたら取り去る。外虚内実の所見に対して用いる。表皮の衛気(肺気)を補い、センパツ作用を強化。結果として寫的作用を与える。えりさんではない。同様に、ためしてガッテンの司会は小野文恵(おのふみえ)であるが、鍼灸で小野文恵といえば、ぶんけいさん。
論文「灸の度量」で命名。「知熱」は「灸熱知覚感度」の略である。井上恵理系の経絡治療家が常用する。
当会において知熱灸の詳細な運用方法については、メリディアン37号『経絡治療における標治法・前篇』においてp20より、大きさ・固さ・壮数・等が述べられている。
脉状診 :
その表す脉状に適する手技手法を決定するために浮沈、遅数、虚実を診る。用いる鍼の大小や刺鍼の手技手法、つまり「手法の補瀉」を決定するために行う脉診
(わかりやすい経絡治療P51〜参照)
比較脉診:
寸、関、尺の三部において左右、陰陽を比較して、配当されている十二経の変動、虚実を判定する為に行う脉診。これにより、証が決定し、「取穴の補瀉」が行われる。中脉を基準として、浮かせて陽分(腑)、沈めて陰分(臓)を診る。
(わかりやすいP経絡治療P45〜参照)
経絡腹診:
各臓の腹部の見所に軽く手を当て、所定の部位の虚実を診る。皮膚のごく浅い表面を軽くなでるように診ていく。決して強く押さえてはならない。
虚の所見・・・張り、艶、弾力が無い。
実の所見・・・突っ張り感があり硬い。
(わかりやすい経絡治療P106〜参照) 
子午治療:
運気論に基づき、それを医学に応用した治療法。1年、あるいは1日のうちに、生命統制機構である12経絡が旺気する。これらはお互いに影響しあって人体に微妙な影響を与えるので、それを応用しているものである。
(わかりやすい経絡治療P232〜参照)
2011.2.20 支部普通部1年講義 『救急法、補助療法(ナソ・子午・刺絡)』中野正得
詳しくは、上記テープをお聞きください。
奇経治療:
正経12経と別に流れている奇経8脉を用いて行う治療。
奇経8脉とは、正経から溢れた気血を受けて排水路のごとくその循行を補正する働きを持つ。治療には、八総穴を用いる。
即効性のある代わり、持続性に欠けるので奇経治療で症状を取りながら、生命力の強化を目的とした経絡治療を同時に行う必要がある。
実際の治療・・・まず主訴部位の診断や病症を見極めたうえで腹診と、テスターなどで確認し、どの奇経に異常があるのか確認する。そして、その奇経に対応する主治穴を用い、治療します。詳しくは、毎年3月の実技が奇経治療になっているのでお楽しみに。
(わかりやすいP237〜、よくわかる奇経治療参照)
ナソ:
頚腕症候群の頚腕をKWとし、KWを点字読みするとナソと読むのでナソ治療とは頚肩腕の諸症状の治療を行うことで、部位はケツボン穴周辺・胸鎖乳突筋前縁、後縁周辺の虚実を整える。
ムノ:
腰仙部症候群のYS(腰仙)を点字読みするとムノと読むのでムノ治療。これは下腹部、骨盤内臓器、下肢に現れる諸症状の治療を行うことで、鼠径部に現れる触覚所見に対して行う。
主に下焦の病症を調整するところで、痺れ・疼痛・腫れ・水虫、更には捻挫や、高齢者によく見られる足が上がりにくく転びやすいなどの治療を行う。なお、上焦、下焦の病の調整にも有効である。
金30番鍼:
子午治療と言えば金30番。ポケットに一本忍ばせておけば、いつでも緊急治療が可能。
補中の瀉法(塵):
虚性の邪を処理するための手技。まず生気を十分に補った後に瀉法を加えるという方法をとる
気の主り。生気の不足している虚体患者に見られ、ホコリでも積もったようなふわふわしたものが陽分に触れる。うっかり見落としやすい。
補中の瀉法(枯):
気の主り。枯れた草や葉のような、艶と潤いの無い脈状。
補中の瀉法(堅):
血の主り。枯れ木の小枝に触るような艶、潤い、弾力の無い脈状。
和法:
瀉法を行った後、脉は邪が取れて虚に転じるのだが、その際慎重に脈を診るとわずかに指の腹を突くような実を触れる。これは、その気血の流れが滞っているということなので、それを流し中和させる。補法でも瀉法でもない。
脈変 :
関西支部の造語。脈状の研究課程において、施術者の捉える抵抗と、検脈者が感じる脈が実際に変化するポイントにはズレがあることを発見。検脈者が触知する「脈が実際に変化するポイント」に施術者を誘導しても、施術者は抵抗を感じていないケースがある。
略して脈変、もしくは脈変ポイント。
ゾーン:
高度に集中し、かつリラックスしている状態。この状態で刺鍼すると、脈が劇的に改善。プロスポーツ選手にゾーン体験者は多い。関西支部の研究部でたまに使用する用語。
虚性の邪:
東洋はり独特の言葉で、陰経より整脉力豊かに補ってもなお、生気が不足した艶と潤いの無いフワフワ、あるいは堅い脉が陽の部に触れるもの。生気が不足しているために実邪に成れないもの。
補完代替医療:
Complementary and Alternative Medicine (CAM)。
西洋医学以外の医学のこと。漢方や鍼灸はもとより、ホメオパシー、カイロプラクティック、バイオフィードバック、アーユルヴェーダなど、様々な療法を指す。
統合医療:
明確な定義はないが、近代西洋医学と補完代替医療を統一したものである。欧米・アジアを含め世界的に統合医療の道を進んでいる。これまでカウンターメディスンとされてきた鍼灸をも、西洋医学に取り込もうとする流れがあり、鍼灸残って鍼灸師残らずという世にも恐ろしい格言が生まれた。
EBM(evidence-based-medicine):
科学的根拠に基づく医療。イービーエム。猫も杓子もEBM。
* 科学とは真理が存在すると信仰する者たちの思想である。ニーチェ。
RCT:
Randomized Controlled Trial。
ランダム化比較試験のこと。無作為割付比較試験とも言う。薬物・治療法が最も適切に評価される、として現在最もよく採用されている試験方法。
医療現場で使用される薬剤のほとんどはRCTで有効性が証明されたものである。
データの偏り(バイアス)を軽減するために、無作為に処置群と比較対照群に分けて評価を行う。
ただ、鍼灸の場合比較対照群には、刺さない鍼・偽鍼・接触鍼・パイオネックスの鍼なし品などで行われるため、圧痛の軽減などの効果が生じ、処置群(鍼を刺入)との差が明確に出ない。結果として、この方法では鍼灸の有効性が証明されにくい。
インフォームドコンセント(informed consent)
説明と同意。正しい情報を伝えられた上での合意。患者さんの選択権、意思を最大限尊重するという理念に基づく。納得診療ともいう。
アンチエイジング(抗加齢)
加齢による老化を予防すること。
医療では、「病気の治療」から、「健康な人のさらなる健康」を主眼としたアンチエイジング医学がある。アンチエイジング医学とは体内で進行する加齢プロセスにより引き起こされる病的老化を予防し、健康な長寿を享受することを、目的とした予防医学である。
承諾書:
 美容を目的とした鍼灸では、鍼による皮下出血の可能性が美容上問題となる。
そのため、施術前に概要を充分に理解してもらう必要がある。これは、患者さんの不安を取り除き、また施術者を守る一つでもある。
皮下出血・内出血:
内出血は、体内の血管が破損し、身体内部に出血することを言い、この内出血が皮下に生じたものを皮下出血という。
鍼灸では、部位や刺入深度にもよるが内出血の可能性は常に存在する。基本的に数日から数週間で元に戻るが、美容目的の鍼灸である場合、美容上影響がでることから、充分な説明が必須である。
施術者サイドから言えば、この出血により「瘀血」が取り除かれ、結果として長い目で見ればより美肌になる、と言われているがRCTによる証明はなされていない。
ノセボ効果:
失望や不安によって症状が悪化する効果。プラセボの反対。
「このような副作用が起こりますよ」と、説明すると本当にそのような副作用が頻繁に起こることが分かっている。
治療院において、nocebo effectはかけない方がよい。
鍼灸医療総合文献データベース
学術関係に関する情報を提供するサービス。全日本鍼灸師学会のデータベース委員会が運営。
最新の研究論文、明治から現代に至るまでに発刊された医学、鍼灸雑誌に掲載された論文を検索できる。
肝と肝経:
肝は脾胃で生成された血を臓し、春の気に応じてこれを発散する。発散する部位は主に胆経である。これとは逆に、肝経には収斂する作用がある。収斂して肝に血を集めるのである。
心と心経:
心は肝血を受けて常に活動している。陽気の旺盛な臓である。もし血が不足すれば死亡する。それで、経絡治療では心に虚なしとしている。心は熱を持って病むので、心に熱が多くならないように少陰心経が制御している。
脾と脾経:
脾は心の陽気と腎の津液を受けて、胃に命令を出して気血津液を生成している。脾が虚すと胃が働かなくなって気血津液を生成できない。脾に連なる太陰経は気を循環させる働きがある。太陰経の気が停滞すると気血津液の配分ができなくなる。
肺と肺経:
肺は脾胃で生成された気を受け、秋の気に応じて収斂する働きがある。それにより皮毛を引き締めている。逆に肺経は気を循環させて陽気が停滞しないようにしている。
腎と腎経:
腎は津液で固まっている。もし、腎の津液が不足すると、虚熱が発生し、脾も津液が不足するので虚熱を受ける。つまり腎虚脾虚で熱の病証が現れる。少陰経もまた引締め固める作用がある。しかし、陰の作用だけではなく、腎にも陽気はある。これを命門という。