録音テープ紹介

2011.10.16 支部治験発表D班 骨随異形成症候群 加賀田

高木:主訴は貧血、ないし骨随異形成症候群ということだったので、メインには貧血がどうなったのか、もしくは血液データがどうなっていったのかをもってくるくべきだった。
あるいは、神経痛、倦怠感の改善を患者さんが望んでいたのか?それらにより、発表のテーマが変わってくる。焦点を当てるポイントが変わるから。だから、主訴は倦怠感など患者さんが最訴えている症状にして、背景として骨随異形成症候群、とすればいい発表になったと思う。成績もいいし。(学術部註:主訴は患者さんが一番訴える症状。倦怠感、頭痛、めまいなど。○○症候群、更年期障害などは病名、症候名であって主訴ではない)
丸尾:まぁ、貧血で胸脇苦満。私なら井穴使う。それぐらい。

2011.10.16 支部治験発表B班 肩こり 渋谷晴代

本田:聴きやすい発表だった。しかし、比較脉診で右手寸口。強めで指を沈めてもあり、やや虚と発表された。これは、どういうことか?
渋谷:全体的に浮で、沈めていくとまだ打っていて、押しきれない感じだった。
本田:高等部以上になると量から質に変わる。それでいくと、肺は虚すと沈むと習ったはずである。また、沈めていってもある、ということは量の診方でしても虚ではないですよね?
そもそも、この患者さんは浮数実で全体的に硬い脉のようであるが、その硬さの中での虚実を診るようにして欲しい。
また、お腹、脾の診所、艶ありふっくらしていて平としているが、証は腎にしている。腎虚であれば、脾は実になるはずである。
渋谷:脾は実であるとは、分かっていたが触ってみると実と感じなかった。むしろ、虚と悩んだほど。それで、平とした。
中島:よく分かるよ。
本田:発表として形式上、まとめて整理して欲しい。また、一回目は陽経処理していない。症状があるということは邪があるはず。陰経を補えば邪が出てこないといけない。邪が出てこないなら、補えていないのかもしれない。
証を脾と腎で迷ったそうであるが、宮脇先生の奇経腹診も参考にできる。通里‐太衝なら脾。太衝‐通里なら腎。
Q「大椎付近のコブは何か?」
本田:アレルギー性の反応がよく出る。花粉症や鼻炎。その場合、取り巻き5分灸が効く。アレルギーであれば、隔ゆを処理すると大椎の反応も変化する。
中島:治療は食後?
渋谷:30分後くらい。
中島:浮数実が気になる。本当の実だったら、瀉法は絶対必要。もしかしたら、陰経に瀉が必要。よく食べる方なので胃の熱が強いのだろう。食後直後は脉状が分かりにくかったはずなので、食前に脉を診せてもらうとよい。
また三回目治療時、腹診で腎が平とある。セオリーというか、形式に無理に当てはめる、というと語弊があるが・・・。
また、平の場合、病症はないとされる。
盲腸のオペ痕についてであるが直接、知熱灸という手もある。オペ痕あると右膝に来たり、右肩にきたりする。オペ痕を緩めるのは必要である。緩めば天枢も緩む。
大椎のコブについてだが、肝の反応がでるという説もある。アレルギーあると肝の反応でる。アレルギーは風の邪だから。
コブに感しては、直接触ったりするより、治療が効いていたら小さくなったりするので、治療が効いているかどうかの目安にしている。また、上の方(上半身とか)のお灸は逆上せるので、治療の最後にはしない方がよい。
正直な発表で、どこで迷ったかよくわかった、いい発表であった。

2011.10.16 支部治験発表B班 前腕のしこり 下市善紀

本田:患者さんの言うことを鵜呑みにしない、ということも知って欲しい。食欲普通。お通じ普通。睡眠普通。でも、よく聞いてみると物凄く食べ過ぎてしまう、寝つきが悪い・・・とか出てくる。普通という言葉に騙されていけない。突っ込んで聞くことで、病症の弁別に必要な情報を初めて聞き出せる。
喉の渇きを感じる、については食べ過ぎて胃熱が発生していると思う。胃腸に熱があると肌はカサつく。こうなってくると陰虚の症状であるが、脉は沈んでいるので肺虚の陽虚としているが、基本的に陰虚であれば脉は浮いている。
話し方も明るくよく話す、とのことであるが陽虚の患者さんであれば、声がか細いとか、口数少ないと思われる。
用鍼は2番を使用しているが、陽虚であれば1番でもよかった。
お腹、診る時みなさん押しすぎの傾向がある。指の重みのみで診るぐらい。極力、力を抜き皮膚の弾力を診る。虚している所は、指に沿って皮膚が凹む。
中島:寒熱の話があったが、これは湯液のもので鍼灸であれば、補瀉を行うので虚か実かを診た方がいい。また、お灸は別に温めるためにしているのではなく、お灸にも補と瀉があり、虚実を補瀉するためにしている。
で、この患者さんの痛み、これは押さえて痛いのだから実。だから、どこか瀉すことが必要。
虚か実を診る癖を付けるようにすること。

2011.10.16 支部治験発表B班 質問会

Q「皮膚痛い。肌がピリピリする患者さん。クリーニング店勤務。アイロンしている。ピリピリしているのは実か?冷風とかピリピリする。自発痛・夜間痛いなし。動作開始時痛い」
A「虚して痛いのであれば、触った時弱々しい。例えば湿布。湿布貼った時、皮膚がふにゃふにゃ。それに近いような性状になっている時、それは虚している。実は、熱を持っているとか、張りがあるとか。おそらく、神経痛であると思うが、神経痛がある人は関節を外気に晒してはいけない。関節は関所なので、そこから風邪が入ってしまう。足首、膝、肘は出してはいけない。なので、そういうことで痛みが出ているのであれば、虚がどこかにあると思う。一番は、患部の所見を見て判断するしかない」

2011.10.16 支部治験発表A班 入会の動機 竹内勲 他

宮田:今日、おっしゃっていただけ内容は、お昼の相談室の時や実技の時にも、気軽に相談してもらってもいい。いい発表だった。お手紙やメールで治療することを友人知人にお知らせしてみてはいかがでしょうか?
弓田:治験発表は初回に限り、入会動機でよい。また、治療院見学を指導部は受け付けているので、どんどん申し込むとよい。
 
Q「右手の手根管症候群。自己治療しているが、すぐ戻る。仕事でマッサージしている。有効な治療法はないか?自分では労宮やその周辺に灸している」
A「本治は?」
Q「していない。局部が効くと思った」
A「灸が効く?その実感はある?」
Q「ある。効く」
A「では、それに本治を加えると、その局部のもちがいい。それが基本である。もち具合で証が間違っていたかも、とかツボが間違っていたかもと練習にもなる」
A「自分で鍼もしにくいですよね・・・。手術は簡単であるが、それで治るとは限らない。オーバーユースでなっているわけで、手根管症候群になると押手も作りにくくなる。将来的には、鍼専門でやっていくように道を決めた方がいい。それから、本治法は絶対しないといけない。脾か肝が多い。それからナソ。てい鍼の丸い方で補うということもある。患部は病気の本質が落とす影である。やはり、できれば支部の同期同士仲の良い人で集まって、治療しあうとよい」
Q「父が右白内障。接骨院で治せないと聞いてきた。しかし、沢田流でやってみると改善しつつある。本会のやり方と併用してよいか?」
A「併用した方がいい」
Q「標治法と本治法、どっちを先にするのか?」
A「本治法である。どんな時にも、まず本治法しないといけない」
A「宮脇先生の臨床こぼれ話にも白内障の治療が載っている」
Q「脉が分からない。本当に分からない。艶なんか全然。どうしたらいいのか?」
A「誰の脉見ても、そうか?」
Q「若い男の子なんかは、分かりやすい子もいる」
A「ご自分の脉が、分かりにくいというわけなんですね。私も私の脉が分かりにくい。私はモデルになってはいけない脉なんです。やはりまず、色んな人の脉見て、まず、六祖脉。わかる人の脉からみていく。自分の脉が分かりにくいとしても、いつもに比べてどうか、浮いている、早い、より分かりにくい。など、違いを探すようにすると、分からないなりに違いがあるのは分かるはず。」
Q「自分の脉が分からないからと、がっかりしなくていい?」
A「しなくていい!」
A「それに関連して、少し違うかもしれないが、脉見て鍼するとよい。刺鍼技術と診脉技術は同時に上達する。普通部では、分からないので当然。また、この上達に関してはコツコツやればやった分だけ分かるというのではない。それもあるが、分かる瞬間とはコツコツやっていって、ある日突然訪れる。そういう風に上達はしていく」
Q「脉診講義を聞いていたが、よく分からなかった。お薦めの書物は?」
A「基本的には教科書分かりやすい経絡治療」
Q「艶とか弾力とか、本会独自の用語もある」
A「脉診を語る、という本を本部が出している。お昼に後ろの書籍係りに聞いてみて」
Q「透析患者。心疾患もある。この前、4リットル抜いたらしい。おそらく心タンポナーゼだと思う。これは腎が心の火を消している、つまり腎の実とみていいのか?(学術部註:心タンポとは、心臓と心臓を包む心嚢の間に液体が貯まり、拍動が出来なくなる状態)」
A「虚です。腎虚の虚熱です。腎実であったとすれば、実証を呈する。激しい痛みなど」
Q「もし、治療するとすれば腎虚?」
A「そうです」
Q「腎に実はないから、肝の実?」
A「いや、腎に実はある。例えば、膀胱炎は腎が虚して膀胱に邪が入った状態ですが、放っておくと邪が腎に移行していく。そして腎盂炎になる。これは腎実。学問上ではないだけ。臨床上ではある」
A「柳下先生の追悼集。これはいい本。後半に座談会がある。これが非常によい。鍼上達の秘訣も書いてある。また、福島弘道先生の追悼集もある。抜山蓋世という本ですが、これを読むと、自分が治せない患者さんに対して勉強不足だったことが分かる。治せないと、つい他の治療法を探して見たりしてしまいますが、それは練習不足、勉強不足であったことが分かる。自分がまだまだであったことが分かる」
 
中野:「柳下先生に治療受けに行ったとき、朝7時に行って、ずーと待って治療が始まったのが3時。治療時間は5分くらい」
A「どういう所で待つのか?」
中野:「待合で。待合広いんで。でも8時からしか入れてくれないんで、みんな外で待ってる。だいたい、待合では20人ぐらいがずっと待っている感じ。皆お弁当持参。ご飯食べに出ていくと、順番を抜かされる」
 
A「それだけ柳下先生は勉強して、練習した結果。そういう手本があるわけ。頑張れば、みなさんもそうなれる。一日百人」
中野:「柳下先生は朝5時に起きて一時間、古典勉強。臨床が夜の10時か11時に終わって、それからまた一時間勉強していた。毎日。それプラス会の運営や講義の勉強や用意していた」
A「そういう先生の追悼集は、心に消えかけた火をぐっと燃やしてくれる」
Q「治療受けた感じは?」
中野:「よく効いた……。押手、刺鍼、ぴっぴっぴっ、という感じだった。それで立てなくなった。誤治だったと思う。が、みなさんいいですか、誤治はすぐ出る。誤治がでるってことは、治療技術が高いということです。また、そういう名人でも誤治するんです。みなさんが誤治してしまっても、落ち込むことない。鍼で体は瞬時に変わるのです。誤治が出たとしても大した誤治症状が出ないなら、そもそも大した治療が出来てないってことです。鍼の技術が未熟だということです。精一杯勉強しましょう」

2011.10.16 支部治験発表E班 弾撥指 十亀孝

三好:何の因果か先ほどの私の講義、血水に相反するような脉だけ見て鍼しているという・・・。今、研究部の脉図班に所属しておられるので、脉を重点にみておられるようで、そういう時期もあってよいと思うが、もう少し全体的な・・・。その肝実の処理と陽虚にしても、大腿骨骨折でプレート入れてて、84才、ぽちゃっとしてて水気が多い、陽虚気味とのことであるが、上焦では肺の病症と腎の病症(浮腫み)を上げ、肝の実の病症をおっしゃられていた。
脉では、肺脾が虚し、平の腎の脉をおっしゃっていたが、最も虚した脉の次に次いで虚した脉を言い、その次は病実になっている脉を言う。その次に旺気実を言い、最後に平を言うことになっているはずである。
肺虚であれば、肺→脾→肝→心→腎。病症にしろ、脉診にしろ順番がある。全体を見て、聞いていて分かりやすい発表にしてほしい。個々の脉の様子などは、こちらが勉強になったほどであった。

2011.10.16 支部治験発表E班 後頚部に冷えを伴う肩こり 田中尚登

小河:いつも私が担当になりますね。少ない回数でよい結果を招いている。肺虚の人は多い。パーキンソンでも肺虚がある。
肺虚の特徴は、上焦部分、冷え、ザラつき、産毛が多いなど。その辺は、散鍼でも艶出る。冷えている部分には、もちろんお灸も有効である。
メリディアンの標治法を証別にして討論している号がある。その中には肺虚では散鍼も浅く軽くするだけで充分だと書いておられた。
肺虚はドーゼを少なく、本治プラス少し散鍼などで充分効くのでドーゼオーバに注意する。これから冬場になるので、肺虚体質は風邪も引きやすくなるので、継続治療して今年は風邪引きませんでした、と言っていただけるようにするとよい。

2011.10.16 支部治験発表C班 足首の痛みと倦怠感 寺尾俊哉

高尾:うまいこと治療されている。聴きやすく、時間配分もよい。
脉診で浮やや数虚。脾虚でいいと思う。足首の腫れは腎虚であることが多いが、発表を聞いていると、この患者さんは、胃切除されているということだったので脾虚かなっと浮かんだ。
陽経の処理ですが、この患者さんが陽虚なのか、ということは今の発表では分からなかった。脉は本当に浮いていたのかどうか。また、浮いている陽虚というのもある。
汗ばみはしないが、倦怠感がとれてこないとのこと。治療中に、ちょっとでも漏らしていて倦怠感が取れてこないのか。その辺は難しい。 この患者さんは、気血水の水の流れが悪く、足首に水が溜まったようになって浮腫になっている。脾虚で正解と思う。お灸でもいいが、置鍼してから本治してみて。
本当は本治後の時点で足首の浮腫みが締まってきているのが、望ましい。そうできるとお体もぐっと変わってくる。
治療間隔が月一回なのが、残念。もっと治療できるのがよいのだが。
高橋:脉状で陽経の処理であるが、締り具合をよく見ること。浮に見えているわけであるが、これは補うか、補中瀉で取るか、判断基準が難しいところであるが・・・
補中瀉で締まることもある。この患者さんは陰性体質なので、しっかり邪は出てこないのかもしれない。補中瀉でよかったと思う。 水は三焦をよくみること。三焦は水の巡り。これをよく見て。あと、小腸。津液を貯めておくのが小腸。
また必ず、脉の状態を患者さんに言う。脉が締まると、水の通る道ができるので、浮腫みがとれてくる。など、説明を充分に患者さんにすることである。それが、脉診の信頼にも繋がっていく。
 
Q「交通事故すると瘀血ができると考えていいか?事故痕が綺麗な場合もそうか?」
A「例えば、婦人科疾患も瘀血があると考える。疑いながら考える。
瘀血イコール肝実と見る。腹診の肝の診所を押す。すると痛い、すると瘀血があるとみなす。
あと、手術痕、手術自体血を使うので、それだけでも瘀血があると疑って治療する。肝実が陰虚に変わっていく。陰虚に変わった時、よくなる。瘀血=肝実」
A「ぱっと見、手術痕が綺麗でも、押し込むと中に瘀血があることもある」
Q「瘀血、乳がんOPも同じか?」
A「同じ」
Q「点血灸はOP痕にもよいか?」
A「よいが、知熱灸でもよい」
Q「子宮がんでリンパも摘出した患者さん、その浮腫みもとれるか?」
A「取れる。水の流れとは解剖学的なリンパ系のみを言うのではない。こういう時こそ血を流す、水を流す、そのために肝実があればそれを処理することが重要になる。お医者様は取れないと、おっしゃる先生もいるが取れる。我々が取らねばならない」

2011.10.16 支部治験発表E班 自律神経失調症 岡崎かおり

三好:肝虚陽虚の患者さんですね。産後で大量出血。手足冷え、しもやけあり。肝の土穴使って治療している。43才ということもあり、時間かかると思う。最初から銀2番で本治しているが、質問にもあったように、てい鍼や1番がよかったかもしれない。
また、脉でも硬いようで陽虚と陰虚を行き来している感じ。フニャフニャになってくると、これは陽虚であるし。 話聞いていると、女性であるが左適応かもしれないと思った。次回、考慮して治療してみてください。
小河:棒灸使っていたが、とても重宝する。フードを付けたものを、ドーゼに気を付ける人は5分。大丈夫な人は10分。一箇所に置いている。トータルで三ヶ所ぐらい。
なので、棒灸を体に入れていい時間はMAX30分以内。これが、ドーゼが大丈夫な場合。ドーゼが少ない方だと10分以内。その内訳は一箇所3分の3ヶ所。が、ほぼ一杯。
三里のお灸は陽気を補うが、私の経験則では5分から10分程度。 自律神経失調症に限らず、パニック症候群、棒灸がよく効いている。 私がよく使うツボは関元穴。それから血をよく使う人は筋縮穴。肝虚証の方に効く。背中が緩み、本治法がしやすくなる。

2011.10.16 支部治験発表D班 前頭部の痛み 多根嘉宏

高木:いい成績でよかった。皮膚が白いことを肺の変動としていた。しかし、証は脾虚としていた。脾虚であれば肺の変動はないはずである。蛇足で申し訳ないが。まぁ、脾虚で皮膚白い人は実際にいる。
ただ、症状に古い頭痛がある。眠って痛くはなかったか?動作痛はなかったか?そういったことで瘀血を判別できる。問診に注意してほしい。 あと症状自体に立ちくらみや、のぼせやすいとあったから腎になにかあったかもしれない。
奇経についてだが、本治する前に施灸したそうだが、@テスターで症状の改善を確認。A本治。B治療後、症状が取れきれていない時、もう一度テスターで確認してから施灸。この順番でするのがよい。本治で取れれば、もうお灸しない方がいい。ドーゼの面からも。
証変える時は、脉、お腹がどうだったか確認して、その結果変更した云々、という発表にしてもらえると、聞いている方は混乱しなくて済む。
丸尾:治療は1+1が2になるとは限らない。+1すると、余計悪くなることがある。どれをしないか、どの施術を加えないか。これが重要である。治療は引き算である。
また、痛みに時間帯があるなら子午を考慮して。

2011.10.16 支部治験発表C班 膝の痛み 森寿之

高尾:難しい治験だったが、よく頑張った。発表が12分オーバーだった。また、しゃべりが速い。身体各部の病症は、言う順番を肝虚であれば肝・腎・脾の順番にすること。その方が聞いていてわかりやすい。証を肝虚をしているが、陰陵泉の腫れに置鍼している。もしかすると、肝虚脾実ではなかったか?発表に陰陵泉が腫れていたとあった。陰実を抜いてやればよかったかもしれない。
豊隆は右で抜いている。胆は反応のある左でとったそうだが、痛いのが右なら右だったかもしれない。痛みは嘘つかない。
膝腫れに、八分灸したそうだが、私は腫れている所と正常な所の境目に4点ほど切皮置鍼してから本治に入る。すると、(脉に)よく締りが出る。試してみて。
この人、虫垂炎のオペ痕がある、そこをお灸や刺絡で反応をとっておくとよい(学術部註:オペ痕、特に虫垂炎のオペ痕は様々な病症を引き起こす原因になる場合がある)。
高橋:ぶつけて痛みが発症しているわけだから、やはり瘀血があるとみていい。局部が怖ければ井穴を使うといい。X脚というから、胆経が引っ張っている。胆の処理が重要だと思う。瘀血があるなら肝実の可能性も検討してほしい。

2011.09.19 支部治験発表E班 更年期障害 石川誠

宮脇:主訴は主訴として、問診で聞き出すこと。偏頭痛とか、肩こりとか。病名は病院でお医者さんに言われたもの。この発表の場合では更年期障害ね。 そういうことで病症の弁別するとよい。 みなさんそうだが、証はいいところを立てている。だから、この班員の先生方が治療して、改善しないのなら適応側間違いだと思う。適応側。 主訴が改善すれば証も変わってくるが。

2011.09.19 支部治験発表E班 頚椎症 河野宏和

三好:卒中タイプの患者さんだったと思われる。河野先生が治療していなければ、卒中になった可能性がある。未病を治すという意味ではいい発表だった。しかし、発表スピードが早い!もう少し、ゆっくりして欲しい。
左心包経・小腸経は心臓に関係ある。昔、若い頃お酒飲んで海に飛び込んだら、心臓から小腸経に電撃が走った。そこに痛みある人は心臓を疑うようにしている。
それに手足が熱いのであれば煩熱しているわけだから、心に何かあるのだろう。

2011.09.19 支部治験発表E班 前立腺炎 牧篤正.

宮脇:よく頑張られたが、(患者さんに)諦められた。これは残念である。古野先生にムノのやり方を聞かれただろうか?例会がないなら水曜勉強会や、それもなければ電話すればいい。患者さんのために、聞くべきでる。そもそも、ムノは難しいのである。
深谷灸に秩辺のあたりが効くとある。で、私考えた。押さえると圧痛ある。そこに知熱を3壮。圧痛を確認して、まだあればもう3壮。
ムノをとにかく、古野先生に聞くことである。聞かにゃぁ〜。

2011.09.19 支部治験発表D班 逆子の治療 永濱康孝.

宮田:経絡治療しておくと、出産時に母体に無駄な出血が少なく、産後うつにもなりにくい。逆子が治ったあとも、治療は継続するとよい。
永濱さんは、お昼の相談室にも、よく来られていたので言うこともないが、逆子の場合、女性でも左(適応側)が出ることがある。右でやっていて戻りにくい場合は、左を考えるとよい。
至陰右15壮、左10壮と頑張ったようであるが、最近の妊婦さんはアトピーでもないのに皮膚トラブルが出ることが多い。消毒用アルコールでも日頃は何もないのに、妊娠期には痒くて痒くてしょうがない、と言われることがある。お灸も、注意しなければならない。
下腹の冷えについてであるが、逆子の場合足腰の冷えがポイントになる。治療後、温かくならずとも、艶や潤い、かすかに温まってきた感じなども判断材料になる。

2011.09.19 支部治験発表D班 頭痛 平岡良康

丸尾:肝虚脾実。肝腎の補して胃も補。それを7回続けている。その中で、頭痛あるならどこかに虚性の邪的な実所見なかったかどうか?もうちょっと探して欲しかった。実があるなら、実をとる処置をすればいい。肝虚であれるのなら(相克の)脾をどうかするか?脾の和法とか。陽経から処置するのも、一つの方法なのであるが・・・。7回目まで、瀉法をしてない模様。また、女性患者さんなので、生理に異常はなかっただろうか?女性の偏頭痛には生理が関係していることが多いので、問診しておく必要ある。
古典に頭項は列欠とあるが、そこに反応なかったか調べてみて。

2011.09.19 支部治験発表D班 後縦靭帯骨化症による左手のしびれ 森脇ゆみ

宮田:後縦靭帯骨化症は、ゆくゆくは頚椎の症状がすべて出る。オペの腹診の仕方は、全体のバランスで診る。また手術痕については、痕そのものに抵抗があるかないか、奥に抵抗などがないか。あるいは完全に虚で冷えているか?などを探す。手術痕は、確かに虚であることは多いのであるが。
奇経についてだが、中枢系として後渓−申脈か、腕のしびれから外関−臨泣とみるのが基本となる。

2011.09.19 支部治験発表C班 慢性化した咳 小平真理子

高橋:温まった時に出る咳は肝が多い。重い咳も肝か腎。軽い咳は肺。
小河:30年来の咳を7回でほぼ完治に導いた。素晴らしいことだ。努力されたこと、例会に遠くから来られていること、小鼻のお灸を工夫されたりして、本当に素晴らしい。
質問にアルコールで悪化するのは、肝に関係するのか?というのがあったが、五臓六腑では、アルコールで悪化するからといって、それだけでは結びつかないと思う。ただ、やはり元々肝虚の人は肝を弱めるし、腎虚の人は腎を弱める。肺・脾も同様。
では、なぜ弱めるかというと、アルコールを摂取すると脈が開く。で、せっかく本治でいい脈作りをしていても、やっぱり崩れやすくなる。だから、治療した当日はできるだけアルコールを避けるようお願いすること。
とっても、大好きな方には控えておいてくださいと言う。この人、絶対飲むと分かっている場合には、ともかく、脈作りをしっかりして諸注意もしっかりして、後は来られるたびに最善を尽くすのみ。
ともかく、アルコールで脈が崩れやすくなるから、極力控えていただいた方が治療結果もよくなりますよ。とお伝えしておく。
痰の絡む咳について。これは痰ということは陰の咳。しかも、痰ということは実。お灸を天突にしたそうだが、鍼もよく効く。天突の奥のコリコリ。押さえると痛い箇所。切皮置鍼。5〜10分。また。天突の横のゆ府穴(腎経)にキョロや圧痛に置鍼。咳、のど痛に効く。ただ、虚性の咳。または、虚性患者では気が漏れるので、お灸がよい。せんねん灸1壮でよいが、それでも気が漏れるなら5分灸3壮。咳がまだ軽減しなければ、もう3壮。

2011.09.19 支部治験発表C班 腰痛ヘルニアと大腿のしびれ 小谷昌弘

高橋:12分ぴったりのいい発表だった。ヘルニアにも程度があるが、治療内容は問題なかったと思う。 病気というのは十二経絡の変動で起こる。というのが基本。胸焼け、下痢があるから胃の虚熱の影響かなと。
小河:アキレス腱に注目しておられたが、補的散鍼ではなく補法したんですね。身体の上下左右にアンバランスが残っていたとすれば、本治で調整しきれていなかったわけであるから、それら部位に着目して、左右差・上下差があったとすれば、標治法でとっていくと治りはもちろん早い。
本治法での瀉法についてだが、患部が右で左に瀉法、と言っていたが、そういうケースはある。(学術部註:原則として患部が右なら、瀉法も右)

2011.09.19 支部治験発表B班 顎関節症 木下美穂

中島:形式について。証決定は、病症の経絡的弁別のあとに入る。
やはり、スポーツマンだし、顎だし、肝胆を整えることを考えるようにした方がいい。肝実がなかったんかな?側頭部であれば胆の処理をきっちりたったら、保ちもいい。
脾虚で背部を整える点についてだが、私の経験では、証と背部の虚実は似ている。脾兪に虚がなかったか?
木下:「脾兪胃兪はペコペコではあった」
古野:食欲はあるが、食べだしたらすぐお腹が一杯になる患者さんなんですね。食後も眠くなる。
この方は36歳。それで食後眠くなるというのであれば、何か原因がある。もっと、イキイキしてないといけない。
これは、どういうことかというと陽気が不足している。脾虚で正解だが、陽経胃経は補ったほうがいい。脾を補って胃に補中瀉しているが、その時点で脈は潰れていたと思う。
背部の所見からしてそうだと思う。補うかお灸すえるといい。左右差をつけて、調整していく。顎関節で、そこまで関節が動きにくいのであれば、肝実があったと思う。
あと、浮いて遅い脈状、これはちょっと治りにくいと思う。難症とまでは言わないが、日にちのかかる疾患なので、標治方に工夫しないといけない。
耳周りの三焦経なんかも、よくみたほうがいい。本治法で、外関に瀉とか、陽池を補うとか。おそらく、外関に瀉がいいと思う。また、エイ風にある硬結はじっくりとらないといけない。また、下顎角から耳に向かって狙うと硬結があると思う。内上方に鍼先を向ける。下関、上関に置鍼も有効かも。左右をよくみてね。
Q「歯軋りは、なくなるものか?」
A「季肋部をよくみて、肝実とる。なくなります」

2011.09.19 支部治験発表A班 腰痛 福西克信

弓田:福西さんが、発表前にメールで原縞を送信してくれた。これは初めてのことで、非常に助かる。みなさんも、是非お願します。
女性49歳の患者さんなので、いろいろ起こってくる時期であるが、うまく治療されていた。 委中を補っているが、委中は補うと気が昇る。瀉法するのが無難。
 
懇談会:Q「いい脉の患者さんは、どこを治療すればいいのか?」
本田:いい脉かどうかの判定は実は難しい。本当に、中身が充実し艶と締り、流れがあったのか?全部揃って、初めていい脉と言える。例えば、しっかりした脉と言うのがあるが、それは浅い病で表面が硬くなっている場合もある。もし、脉で異常を発見できないのであれば、お腹を診ること。脉は指先だけで判断するしかないが、お腹であれば見た目、手の平全体で触った弾力、艶、温もり、を診て異常ないか調べることができる。本当に、いい状態であれば、どこを触ってもいい弾力や艶があるものである。例えば、柔らかく感じたとしても、健康な子どもと比較してみると、締りのない柔らかさではなかったか?など。そういうのを見比べて証をたてる。脉だけで証を決定するのではない。
Q「切経で変化がない場合、それは自分が読み取れていないからなのか?」
弓田:切経にも、やり方がある。ちゃんと切経すると、脉は変わる。やり方を実技時間に先生に見せてもらって。
Q「治療後、だるくなった。これは証が違うのか?」
弓田:上級者が治療して、証が違っていると主訴と違う症状がでる。だるくなったという場合は気が漏れている。
Q「鍼を当てただけで、だるくなったが?」
弓田:鍼は刺入してからが、鍼ではない。取穴、押手、下圧、すべて含まれる。どこかで、力が入っていたか粗暴さがありはしなかったか?

2011.09.19 支部治験発表B班 左手CM関節炎 濱あらた

中島:むくみがあるというが、腎虚であれば虚熱が原因なのだから、本治に土穴使っているが、経金穴ではなかろうか?湿でのむくみでれば、土穴というのも分かるが、やはり腎虚であれば虚熱の処置が重要と思われる。
古野:奇経の合谷‐陥谷がよく効いた。よかった。腹証もよく見ている。また、発表に向けた苦労が見受けられる。よく頑張った。
ナソについてであるが、拇指は前斜角筋、鎖骨裏、胸鎖乳突金の裏、このキョロを取る。また、上肢はムノでも取れる。ムノであれば、胃経の通り(学術部註:大腸経と胃経はともに、陽明経。ムノで大腸経の病変を処置する場合は胃経を取る)なので、衝門穴。比較的浅いところに反応があると思う。
それから虫垂炎の手術していると、大腸経(学術部註:例えば拇指)の病証が出やすい。手術の周辺の硬結をとること。天枢の反応(学術部註:天枢は大腸経の募穴)もよくとること。
この患者さん、腎虚でよかったと思うが、肝実がなかっただろうか?細い脉であれば、土穴でよかったはずである。腎が見にくいとのことであるが、腎は押さえて骨から浮かせると、必ず触れる。触れないのであれば、浮いていて開いている脉だったと思われる。

2011.7.17 治験発表A班 不眠 山川健

本田 治療前に検脈と表現している部分があった。治療前は診脉。そして、施術により脈を整える整脉。そして、治療後の検脉となる。
あと、検脉して、変化が分からなければその旨も記載して発表してほしい。そうすれば、症状だけを追いかける治療ではなく、脉をみようとしていることが、こちらにも分かる。
全体的な治療に関しては、治療後脉見て、その後腹も見て確認してほしい。脈がよくなっていれば、腹もよくなっている。
古野 15年の不眠が、よくなっている。鍼は確かに効いている。
本治のあと、長持ちしない、整脉力不足と本人もいっているが、これは徐々に力ついてくるものであるが、抜鍼タイミングは自分の気の感覚。そういったタイミングがいつか?これを一刻も早く会得することである。
不眠なぜか?という病理についてだが、これは陰が虚している。脉が浮いて開くのは、陰虚のため陽をコントロールできていないから。
陰がしっかりしていれば、夜に陽気を中に引き入れられる。しかたがって、陰を充実させるような治療をしないといけない。浮脈を改善しないといけない。
治療効果を長持ちさせるには、腎虚だから腎の脉がどうこよりまず、寸関尺の陰脉、陽脉を整える。左手の寸関尺は陽脈。右手は陰脈。だから、左手の脈は締まって、しっかりした脉であること。右は陰脉であるから、開いてはないけれどふわっとしたような脉。そうなっていることが大事。そういう脉を作れると、効果も長持ちする。

2011.7.17治験発表B班 首のねんざ 奥山定則

三好:陥下はカンゲと読む。首の捻挫となっているが、寝違いですよね?捻挫は脱臼して戻ったもの。捻挫となると損傷はかなり激しい。肝で本治法している時は、痛みが元に戻っていて標治のみのときから、よくなり出している。ということは、右の肝が間違いだったかも。また、原稿をまとめる上でバラバラな部分がある。肝虚であるなら、肝虚の脉、肝虚の腹証、肝虚の病証になっていて、肝虚証となる。
宮脇:大きな声での発表は、非常によかった。脉もよく診ている。診ている分、もったいなかった。みなさんに言っておくが、座ったままの治療はしない方がいい。貧血を起こす。ただし、まったく動かない首だと寝たら起きられなくなる。そこは気をつけて。そんな場合は、落枕使ってください。左右比べ、痛い方に鍼を接触させる。物足りない場合は和法の手技。鍼したまま首を限界まで動かしてもらう。動くようなら、ベットに寝てもらい治療する。そして、子午。

2011.7.17治験発表A班 肩背部の張りと凝り 藪下敦子

本田:ちょっと早口だった。元々は、月経痛もあり子宮摘出もあるから、瘀血もあったかも。OPで血虚になって肝もありかな?と思ってきいていた。腎、脾、腎と証を変えているが、証を変える時は、慎重に腹診や切経でよく確かめてやると間違いがない。
鍼は一本が大事。一本目でよくならなければ、2本目があるからいいや、などと考えてはいけない。一本目がよく変わるし、一本で変えた方が術後の保ちもいい。
古野:肩甲間部のがんこなこりは、難しい。私は聞いて脾虚かなと思った。瘀血で脾虚肝実かなと思った。黒っぽくてザラツキで肺がからんでいるから腎というのも分かるが…。
ポイントは腹診にある。腹が脈より分かりやすい。脾虚の腹は心下部がポニョポニョ。腎なら心下部はやわらかいが、旺気しているため厚みがある。脾虚は薄っぺらい。もっと、腹の皮膚表面をよくみないといけない。虚してるとこは、指の重さを乗せた時、ひっぱると、皮膚表面の皮だけが動く。これは虚している。虚してるところは、ポンとのせると指が沈んでいく感がある。旺気実なら、それほど凹まない。
慢性所見持つ患者さんは、どこかに実があるので次みることあれば肝の実がないか、よくみてほしい。手術もしているので、肝が絡んでいる可能性ある。
標治としては、肩背部の頑固なこりは、缺盆の頸よりの斜角筋に、スジ張りがある。そっと触ると筋の間にすスジ張りがある。静かに補法でちょんと抜くと肩背部がすっとする。また、支正など腕に圧痛ないか?補中瀉でとると肩背部とれる。

2011.6.19 治験発表A班 腰痛と右下肢の浮腫み 門脇貴志

弓田:とても、本をよく勉強されているのが分かる。本もよいが、分からない点あれば先輩・先生・担任に直接聞くのが早いこともある。最初は単純な治療を重ねていくのがよい。脾なら脾虚単一。腎なら腎虚単一。それで、治らなければ相克も考える。使う穴については9月に取穴の補瀉という講義があるので、そちらをよく聞いてほしい。もし、相克で治療するのであれば、適応側が右だとしたら、本証を右で治療し、副証は左の穴を用いるという原則がある。

2011.6.19 治験発表A班 肩コリ 齋木香穂里

弓田:緊張を感じさせない、よい発表だったがもう少し大きな声だったら、なおよかった。比較脉診は比較脉診と言うように。ややあり、と表現している部分があったが、それは実のことだろうか?実なら実と言うようにすること。2回目に証が変わったが、1回目同様に細かく描写する必要ない。必要な部分を抽出して、こういう理由で証を変更した、とすればよい。所見を述べる時は、最も虚した所見から順番に並べて述べること。着眼点は申し分ない。

2011.6.19 治験発表B班 下肢のしびれ 武田友里絵

中島:質問の志室、臀部の手法は、これは外虚内実の処理をしているということ。ステンで内の実を緩め、表面を補って抜鍼している。5分灸では、外虚を補って内実をとっている。外虚内実を探す時、圧痛でもって、内実を見つけ、その表面を外虚として捉えているのであろう。
脉が細いので違うかもしれないが、左足の母指痛は肝実かも。隠れ肝実かも。
古野:左母指痛はジンジンする痛みなので、やはり肝実の可能性ある。肝の脉をよく触って、よくカンがえてみて。骨まで沈め、転がしてみる。肝実なら実があれば鍼体でもあるような堅さが観察される。ムノでは、患側の上前腸骨棘の少し下の内側にキョロがあるはず。頑固になれば、骨にくっついて深くに所見できる。慢性では、深いところを診る。補助療法を適度に使い分けているのが素晴らしい。目的意識を持って、使い分ける、これが大事。一度に全部使うというのではない。

2011.6.19 治験発表C班 左腰部から下肢にかけての張り 橘順子

宮田:証を変更するなら、その根拠を書くようにすること。症状が多いと、つい治療量が多くなるので、引き算の治療ということも考える必要がある。例えば、今回は膝の調子いいなら膝の治療は止めて、他の症状を重点的に治療するとか。あと、リハビリ。高齢者のリハビリはすると悪化することもあるが、しないとよけいに拘縮することもあるので全体的なQOLの向上の向け、アドバイスされるとよい。
小河:3回、証が変わっていたが、まれにコロコロ変わる患者さんもいる。それに術者がついていけないと、増悪させてしまうケースがある。誤治反応が出ていないなら、これはこれでよかったのだと思う。
子午、症状が左右にあったため使えなかったと発表されたが、子午は2穴までは使える。体力がある患者さんであれば、3穴いける。右膝痛に左の外関使った後、左膝痛に右外関使って、なんら問題ない。

2011.6.19 治験発表B班 五十肩 松本卓士

中島:奇経。通里は左がほとんどだが、反応みてとっているので、それなら右でも問題ない。発表のために、たくさん勉強したと言っていたが、それが一番素晴らしい。
古野:一鍼一鍼を大切にしたいと言う、考察がいい。中には、治験が嫌で退会される人がいる・・・。もったいないと思う。我々も、講義があるとなると勉強する。発表があると勉強する。
脾虚としているが、発表には肝腎の病証もあった。ならば、それも追及しないといけない。脾虚というだけで終わらせたらいけない。証を脾虚したなら、それはそれでいい。しかし、他の病証を捉えたのであれば、それがどうなっていったか?を、追及していかないと治療は終了したとは言えない。
それから、五十肩の結滞障害、これは肺・大腸に実がある。突っ張っている。ということは、肝虚かも。 それから、上肢を動かすのは鎖骨が非常に関係深い。結滞するには、鎖骨はねじれる必要がある。ということは、胸鎖関節が柔らかくないと上肢は動かない。ここが柔らかくならないと五十肩は治らない。
結髪は小腸、三焦。天宗、ジュユ。後背筋が重要でヒコン、志室、腎兪を取ると肩は動くようになる。

2011.5.15 治験発表D班 『顔面麻痺』 柴田直樹

弓田:柴田さんは入会7年目。さすが。顔面麻痺は一度、悪くなるとこまで悪くなる。そのこと最初に、患者さんに説明しておかねばならない。気になる点は、なぜお好み焼きを2週間食べたのか。そんなに美味しいのか。それはともかく、固執する性格なのであれば肝実もあったかもしれない。

2011.5.15 治験発表C班 『頚椎症』 茶谷洋二

小河:申し分ない発表だ。関西支部らしく笑いもとっている。脉の観察法も素晴らしい。しびれもナソで取れる。斜角筋。側臥位になると、硬結がよくみえる。また、しびれには散鍼で指先までよく流すこと。5〜7割とれるぐらいを目標に。一度に全部とることを目指すと増悪する。もし、とれない時は小河鍼灸院まで、お越しを。
学術部:標治法の金の大砲3発は見もの。みなさま、ぜひ追試のほどを。

2011.5.15 治験発表C班 『腰痛』 堀田周吾

中島:腰部は左右で刺激の量を変えるとよい。左右のバランスを整えること。
小河:本治に銀1番使っている。患者さんは、体格もしっかりしているようなので、その場合補法の技術をある程度習得していれば、硬い脉にすっきり伸びを与えるには、2か3番鍼がよい。太い硬い脉には太い番手で。あと、花粉症は上焦に色々な所見が出る。その処理と下焦にも冷えなどの、上下の交流ができていない所見があるはず。上下の交流させるため、膀胱経の気を流すとか。

2011.5.15 治験発表B班 腰痛 佐野将兵

三好:陽経はずっと左でしている。陰経も左。この場合、陽経は病側である右でした方がいい。陽経の処理は脉位でとるとしているが、病側でとるのが基本。それと、腎兪の硬結がそんなに気になるなら、標治法で深瀉浅補という手技がある。経絡治療でも深い鍼ある。柳下先生でも、鍼を押手いっぱいまで入れることは多々ある。ただ、むやみに響かせない。そーっと入れそっと抜く。そして、堅さがとれたかどうか調べたり、後揉捏はしない。次回来られた時に、緩んでいるかどうか確認する。
宮脇:陽経の処理は、症状がないときは脉位でとる。不眠症とか。症状あるときは病側。キョロという実的所見を探すこと。これが基本。わかりやすいにも書いてある。
この治験発表についてであるが、質問が少ない。これは一生懸命、筆記しているから。書かなくてよい。聞くのである。聞きながら患者さんをイメージするのである。想像しつづける。イメージとして脳裏に患者さんを作り上げる。すると、自分のイメージと違うのでないか?と思う部分がでるはず。このような患者さんなら、私ならこう施術するぞ、と。おかしいやないか、なんでや?と質問が浮かぶはずである。そうしてこそ、この治験発表が生きるのである。

2011.5.15 治験発表B班 『顔のほてり』 山本功

三好:五香は「ゴコウ」と読む。左の腎を常に使っているようだが、それは止めた方が良いかもしれない。締め付けられるような頭痛、めまい、動悸、またうつ患者に左腎すると、気がどんどん下がり、よけい鬱になる。顔のほてりには上気と逆気がある。逆気は足と耳冷たい。上気は耳まで熱い。逆気なら足が温かくなるような治療を行うこと。そうなっていないなら、証を見直す必要ある
宮脇:私は肝でやりたくて、ムズムズムズムズしていた。あんまり、変化しないなら思い切って変えるということも必要。めまい、頭痛は肝の病症。上気は肺。奇経で照海列欠と太衝内関を使っているが、この照海と太衝は組み合わせるとよくない。肝である太衝内関を使った時、症状改善している。奇経は即効性があるので、テスター当てると、合っていればピシっとほてり取れる。

2011.4.17 支部治験発表E班 乳癌手術後の肩関節痛 清水 大雅

古野:肝実を和法でとっているが、これは瀉法でもよかったかも。肝実をみるときは、左関上は案外虚に見えることあるが、グッと沈めて脉を転がすようにしてみると、実の脉状を触れるということがある。肝実の見落としに注意されたし。実は結ぼれると古典にある。硬いわけであるが、これが鍼柄ぐらいの堅さのものもあれば、鍼体ぐらいのものもある。こういった肝実をうまく処理すると脉に幅がでてくる。
ナソに深瀉浅補しているが、これは鍼を入れているのなら十分注意してやってほしい。
あと、乳頭の上が大腸(合→陥)、下が胃経(陥→合)となっている。参考にして。
腹証を診るときは掌全体で診る。指先だけでみない。ツヤ、弾力をみる。小里方式の時、鍼してお腹柔らかくなったということあるが、これは間違っていること多い。フワッと虚しているだけである。表面と弾力をよく診ないといけない。触って気持ちのいいお腹になっていなければならない。手のひらをうまく使うのがコツである。

2011.3.20 支部治験発表A班 『左足の痛み』 渋谷春代

小河:寝入り悪いのはホニャララ、寝入りよいが後目覚めて眠れないのはホニャララ、寝ているのか寝てないのか分からないのはホニャララ。というのが、睡眠の経絡的弁別です。
高尾:痛みは、陽経の処理が重要です。奇経もするといい。股関節の患者さんはムノをよく診るとよい。上前腸骨棘の奥の硬結をキッチリとるように。

2011.3.20 支部治験発表B班 『慢性疲労による体力低下』 富平有香子

本田:全体像がイメージしやすい発表だった。
今後は、患者さんの全身の様々な所見をもっとしっかり掴むようにすると、自信をもった鍼が打てるようになる。自信を持って打つと100が120にもなる。前回の発表と比べて成長の兆しが見えた発表だった。

2011.3.20 支部治験発表D班 『右坐骨神経痛』 榎本 寛

高橋:全部、暗記されての発表すごい。坐骨神経痛には素問には風・寒・湿とある。脉状に出た冷えを現すような邪(キンキンしたもの)をよく診ること。薬を飲んでいなければ、そういう邪がみえる。それを陽経に浮かせてとること。
丸尾:お灸を何クールするか?という質問あったが、2クール目をするかどうかは、穴所にもぐさを置き、それで脉状がよくなるならする。よくならないならしない。神業的に、直感で決めるようなものではない。

2011.2.20 支部治験発表C班 『不妊症』 乾雅典

中島:高等部にもなれば、決まり切った文言(去ること弦絶のごとく抜鍼・・・など)は、ある程度省略してもよい。その分、所見観察などを増やして。不妊治療に中条流のお灸がある。冷えに効く。
小河:不妊治療は現代日本では男性不妊も多いので、ご夫婦揃って治療するのがよい。

2011.1.16 治験発表C班 『左足の知覚異常』 笹山靖代

患者さんも鍼灸師。華麗に治療し、来年度入会なさらしむるよう目論むものの・・・。証が肝虚、脾虚、肺虚、腎虚、二転三転一周してしまう。
小河:10回で一つの節目、段階がある。一つの証で続けてみることも必要。10回続ければ、必ずどこかで変化が見えてくる。治療効果を貯金・蓄積することが大事。
学術部:証を迷って、すぐに変えてしまったことがある方は必聴。続けるコツ。続けさせるコツ。4回10回の法則。

2011.1.16 治験発表B班 『肩凝り』 山本善平

中野:治療二回目の下痢は本治の影響か、標治の影響か? 刺激量が少ないと全身に作用し、多いと局部に作用する。 本治の量が少ないので、本治の下痢である可能性が高い。 クローン病・過敏性腸症候群は肝虚が多い。それも陽気不足が多い。

てい鍼を使った誤治調整法にも言及されています。学術部。

2010.12.19 治験発表D班 『吐き気、嘔吐』 松山晋一

胃経を補うことで劇的に改善した治験。
小河:寫していい邪は、中脈の上に「こってり」まとまって出る。寫して悪い邪は、中脈にの上に綻びた出方する。もちろん堅く触れるが、これは、陽分が開いている。補中の寫法など、寫法するとよけい固くなる。
寫していい邪と、寫して悪い邪の鑑別について。

2010.11.21 支部治験 A班 『つわり』 武田友里絵

宮田:つわりのお手本のような発表。
証を間違うと、つわりは治らない。脾が多いが肺や腎、肝もある。妊娠していると分かったら、腹臥位はしないこと。妊娠初期であれば全然問題ないが、しないほうがいい。浮脈ならば、予後は良好。

つわりの治療を初めてされる方は、聞いてみてください。子午治療もされています。学術部

2010.11.21 支部治験発表C班 腰痛 金谷拓郎

高木:肝でしているが、肝なら肺はもっとがちっとでる。浮いて触知できにくいようなのであれば、腎かもしれない。効果なく、脈も動かないのであれば、証変更も考えるように。

2010.11.21 支部治験 DE班 『尿路結石を伴う腰痛』 中村常生

20年来、脾虚で治療しておられた患者さん。詰まると腎虚になっていた。大発見したと思った治験。
清水大雅先生「私も普段、脾虚肝実の患者さんが腎虚になった。患側の京門に多壮灸が著効。予防でしているとよい」
三好先生講評「柳下先生の原論で、脾で続けていたら、腎は相克で虚すとある。たまにツボを変えることも必要。補う技術が高くなってくると、相克にも影響を与えているはず」
この日、奇しくも研究部の安井先生が結石痛あり。確かに脈は腎虚になっておられました。中村先生交え、全員で治療。京門に多壮灸も行う。結果は、安井先生まで。

2010.11.21 支部治験 DE班 『肺真菌症』 藤田嘉久

肺に真菌が付着。胸膜が癒着。治療は抗生物質のみ。3年治療するが、芳しい効果なく、このまま増悪するようなら手術しかない。鍼灸治療に最後の希望を託す。
現在までの治療回数28回。本治で基礎体力を増強し、低体温が改善。それに伴い症状も改善中。
丸尾先生講評「脈状を変えることで、どんな病気にも経絡治療は対応できる」
珍しい症例ですが、難治性疾患への対応法の参考になると思います。学術部。